コラム

短期前払費用特例について

税務

前払費用は原則として損金の額に算入されません。例外規定として、要件を満たしたものについては、損金算入が認められます。今回は短期前払費用が認められる要件や注意点を解説いたします。

◆短期前払費用の概要

前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時において、まだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。

原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものですが、要件を満たす場合には、支出した金額を支出した時の損金とすることが可能です。これを短期前払費用の特例といい、税務上認められている制度です。

(法人税法基本通達2-2-24)

 

メリット

・経理処理が簡素化できる

 支出時に損金経理ができるため、前払費用部分確認し、役務提供時に科目を振り替える必要がなくなります。

・適用初年度の節税となる

 適用初年度は、翌期に役務提供を受ける分の支出まで損金に計上するため、節税効果があります。ただし翌事業年度からは継続して処理することになるため、同じ契約、同じ金額であれば節税効果はなくなります。

 

◆短期前払費用が認められる要件

①支払った日から1年以内に役務提供を受けるものであること

②継続的に支払った日の属する事業年度で損金とすること

 翌期以降も継続して年払いしていく必要があります。

③支払が事業年度中に完了していること

 複数年分を一括で支払う場合は対象外です。

④等質・等量の役務の提供であること

 サービスの提供に対して対価を得るものに限ります。

 物や資産の提供に対して対価を得るものは対象外です。

 毎月決まった内容の役務(サービス)を、決まった分だけ受ける必要があります。

 

<対象となる取引例>

・年払いの保険料

・オフィス賃借料

・業務用ソフトウェアの年間ライセンス料

・ビジネス関連の団体やクラブの年間会費

・年間契約の通信費

 

<対象とならない取引例>

・借入金に係る支払利子

・紙の雑誌や紙の新聞の購読料

・家賃収入に対応する支払家賃(収益に対応する費用のため)

 ※収益の計上と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められません。

 

短期前払費用は、適切に処理することで税務上のメリットを享受できる反面、不適切な処理が行われた場合には税務リスクを伴います。そのため、認められる要件を正確に理解し、対象となる取引を適切に管理することが重要です。

また、契約初年度の節税効果は期待できますが、前払いという支払方法は、まとまった資金を用意し続けなければならないというデメリットもあります。節税のために支払方法を決定する際は、慎重に検討する必要があります。

 

ご不明点がございましたら、お気軽に税理士法人CROSSROADへご連絡ください。

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