金地金等を譲渡して利益を得た場合の課税関係
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現在、多くの中小企業で後継者不足が問題となっています。その中でM&Aを活用した事業承継は注目を浴びています。
今回紹介する中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)は経営力向上計画にもとづいてM&Aを実施した中小企業が活用できる制度です。
①本制度の対象となる中小企業
本制度の活用に際しては、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定が必要となっており、当該計画については、常時使用する従業員数が2,000人以下の法人または個人の「特定事業者等」のみ提出が可能となります。
その上で、税制の適用を受けるためには、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人もしくは資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人に該当する必要があります。
②要件
本制度は、特定事業者等(売却企業)の株式を取得し、事業継承する場合に利用できます。事業譲渡や合併の際は利用できません。さらに、取得価額が10億円を超える場合も利用できません。
➂制度内容
2027年3月31日までに事業承継等事前調査(実施する予定のデューデリジェンスの内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、株式取得によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料)の70%の金額を準備金として積み立てることができ、その事業年度において課税所得から損金算入が可能となる制度です(益金算入開始までの据置期間5年)。
また、2024年度の税制改正にて本制度の拡充・延長が発表されました。内容としては過去5年間にM&Aを実施した中堅・中小企業が、産業競争力強化法において新設された特別事業再編計画の認定を受けて株式取得によるM&Aを実施し、認定後1回目のM&Aにおいては株式取得価額の90%、2回目以降は100%の金額を準備金として積み立てた場合に、その事業年度において当該金額を課税所得から損金算入することができます(益金算入開始までの据置期間10年)。
④本制度のメリット
本制度を活用することで2つメリットがあります。
1つ目はM&Aによるキャッシュアウトの低減です。
本制度を活用すると、M&Aで投資した金額の最大7割を準備金として積み立て、同額を損金算入することができます。損金算入をするということは、経費として計上する金額がその分増えることになります。よってその分だけ利益が減るため、結果として積立金を積み立てた事業年度には一時的な節税効果が発生します。
仮にM&Aでの投資額が5億円、法人税の実効税率が33%とすると、5億円の投資に対して積み立てられる準備金は最大で3.5億円です。この3.5億円を積み立てた場合、同額が損金算入されるため、一時的な節税額は以下のようになります。
5億円の投資額に対する一時的な節税額=3.5億円×33%=1億1,550万円
したがって、M&Aによるキャッシュアウトは5億円ですが、同時に1億1,550万円の一時的な節税効果が生じるため、差し引きすると正味のキャッシュアウトを3億8,450万円まで減らすことができます。これが、一つ目のメリットです。
ただし、積み立てた準備金は6年目から毎期均等に5年間で取り崩し、その同額が毎期益金として算入されますので6年目以降は注意が必要です。
メリットの2つ目はM&Aリスクの低減です。
中小企業事業再編投資損失準備金を積み立てるためには、事業承継の内容などを記載した経営力向上計画を作成し、主務大臣の認定を受けなければなりません。その際に、「事業承継等事前調査チェックシート」を提出します。
このチェックシートは、M&Aの実施にあたり財務や税務、法務に関するデューデリジェンスがどのように行われているかを確認するための書類であり、これはM&A成立後の報告時にも提出します。
このように、デューデリジェンス実施についての行政側によるチェックが行われることにより、M&A後に簿外債務や取引先とのトラブルが見つかるリスクを低減することができます。
中小企業事業再編投資損失準備金が創設されたことにより、M&Aの買収側企業のリスクは以前と比べかなり軽減されるケースが増えることになりました。M&A成立時に起こる買収側企業のキャッシュフローの悪化は、積立金の損金算入による課税の繰延がなされることにより、ある程度緩和することができます。
また、この適用を受けるためには行政によるデューデリジェンスについてのチェックを経なければならないため、結果として買収側企業のリスクが減ることになります。
M&Aでお困りの方は税理士法人CROSSROADへお気軽にご相談ください。