コラム

グループ法人税制(2)資産の譲渡取引

税務

前回は、グループ法人税制の概要について説明しましたが、今回は、特にグループ法人税制における「資産の譲渡取引」について説明します。
法人間で資産の譲渡があった場合は、原則、時価と簿価の差額が譲渡損益として課税対象となります。ただし、完全支配関係のあるグループ法人間は、その法人同士が実質的に一体である、との考えのもと、資産の移転時点では課税されず、一定の事由が生じるまで繰り延べられます。

■対象法人

譲渡法人、譲受法人ともに内国法人であること

 

■対象取引

完全支配関係のある譲渡法人から譲受法人への譲渡損益調整資産※の譲渡取引

 

譲渡損益調整資産とは※

以下の資産のうち帳簿価額(減価償却資産は償却後の帳簿価額)が1,000万円以上のもの

・固定資産・・・土地、建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、特許権、商標権、ソフトウェア等

・固定資産以外の土地等・・・販売用の土地等

・有価証券(譲渡法人または譲受法人において売買目的有価証券であるもの以外)

・金銭債権・・・売掛金、貸付金等

・繰延資産・・・創立費、開業費、開発費等

 

譲渡損益調整資産から除外されるものの例

・帳簿価額が1,000万円未満のもの

・棚卸資産(ただし、販売用の土地を除く)

・のれん(営業権)

 

■譲渡損益の戻し入れと通知義務

繰り延べた損益は、次の事由が生じたときに、譲渡法人側で実現します。

・譲受法人における譲渡損益調整資産の譲渡

・譲受法人における譲渡損益調整資産の償却、評価替え、除却等

・譲受法人と譲渡法人との関係が完全支配関係でなくなった場合

 

譲渡損益を戻し入れるためには、譲受法人における譲渡損益調整資産の状況を知る必要があるため譲渡法人と譲受法人との間で情報連携(通知義務)が課されています。

 

■消費税関係

グループ法人税制は法人税法上の規定であり、消費税は関係ありません。消費税法ではグループ法人間の資産の譲渡取引等について繰延規定がないことから譲渡法人の課税取引は「課税売上」になり、譲受法人では「課税仕入」になりますので注意が必要です。

 

■まとめ

グループ法人税制により無税での資産移転の選択肢が生まれるので、グループ法人間で柔軟かつ機動的な資産の再配置や資本の最適化を図ることができます。一方で繰延譲渡損益の継続的記録や一定事項の通知などが必要になるため、納税者の事務負担が増加する可能性があります。

実際の取引がグループ法人税制の対象になる取引であるか慎重な判断が求められますし、対象となる場合はその影響を考慮する必要があります。

ぜひ一度CROSSROADグループへお気軽にご相談ください。

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