コラム

電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税関係

税務

今回は、電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税関係についてご説明します。
これからご説明する法律は平成27年から施行されている法律ですが、インターネットやクラウドサービスが身近になった今、消費税法の中でも、より密接に関わってくるものになります。

1.施行の背景

 この法律が施行された背景には、当時の消費税法の課税上の問題がありました。当時、海外の事業者から受けた、インターネットによる電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供は、消費税の課税取引とならず、同じサービス等の提供を国内の事業者から受けた場合には消費税の課税取引となる、という違いがありました。

この法律は、国内外の競争環境の公平性、中立性を確立することを目的として施行され、それより、海外の事業者から受けた、インターネットによる電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供も、消費税の課税取引に該当することとなりました。

 

2.電気利用通信利用役務の提供の意義

 電気利用通信利用役務の提供とは、対価を得ておこなわれる、インターネットによる電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供で、次のような取引が該当します。

 ① インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウェア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含む。)の配信

 ② クラウドでのソフトウェアやデータベースを利用させるサービス

 ③ クラウドで顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス

 ④ インターネット等を通じた広告の配信・掲載

 ⑤ インターネットでショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)

 ⑥ インターネットでゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス

 ⑦ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの。)

 ⑧ インターネットを介して行う英会話教室

 

また次のように、その取引が通信自体であるものや、電気通信回線を介する取引で他の資産の譲渡に付随して行われるものは該当しません。

 ① 通信(電話、FAX、データ伝送など。)

 ② ソフトウェアの制作

 ③ 国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングを含む。)

 ④ 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等

 ⑤ 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等

 ⑥ 著作権の譲渡・貸付等

 

3.国内取引の判定基準

 消費税の課税取引の判定基準のひとつとして、その取引が国内でおこなわれた取引(国内取引)であれば、課税取引に該当するという要件がありますが、電気利用通信利用役務の提供に関しては、その「役務の提供を受ける者の住所等」が国内にあれば、国内取引と判定されるようになりました。

 

4.事業者向け電気通信利用役務の提供

 3により注意すべき取引となるのが、国外事業者から国内の者が受ける電気通信利用役務の提供です。施行前は課税取引に該当しなかった取引ですが、国内の者が役務の提供を受けるため、施行後は課税取引に該当することとなりました。

さらに、その役務の提供を受ける国内の者が、事業者または消費者のいずれに該当するかにより、消費税の納税義務者が変わることとなりました。その区分は次のとおりです。

 

 ① 国外事業者がおこなう消費者向け電気通信利用役務の提供である場合

役務の提供をおこなった国外事業者に、消費税の申告納税義務が課されます。

 

 ② 国外事業者がおこなう事業者向け電気通信利用役務の提供である場合

 役務の提供を受けた国内事業者に、消費税の申告納税義務が課されます。

(リバースチャージ方式)

 ※リバースチャージ方式とは、役務の提供を受けた者が、提供をおこなう者の申告納税義務も請け負う方式。

 ※ただし、その国内事業者のその課税期間の課税売上割合が95%以上または簡易課税適用課税期間であれば、リバースチャージ方式の採用は不要。

 

5.4の具体的な取扱い

 また、電気通信利用役務の提供を受けた場合、支払った対価の取扱は、4の①、②それぞれの場合でも、細かく分かれます。具体的には、次のとおりです。

 

 ①の役務の提供を受ける場合、その相手先から請求される支払は消費税が含まれており、

  ・支払う相手先の国外事業者が「登録国外事業者」 ⇒ その支払対価は課税仕入

  ・支払う相手先の国外事業者が「登録国外事業者」以外 ⇒ その支払対価は対象外仕入 

  と区分されます。

 

 ②の役務の提供を受ける場合、その相手先から請求される支払は消費税が含まれておらず、

  ・国内事業者の課税売上割合が95%以上または簡易課税(リバースチャージ方式不採用)

   ⇒ その支払対価は対象外仕入(消費税が含まれていないため)

  ・国内事業者の課税売上割合が95%未満(リバースチャージ方式)

   ⇒ その支払対価は課税売上及び課税仕入(両建て)

  と区分されます。

 

現在、インターネットやクラウドサービスの普及により、どんどん新たな形態の経済取引やサービスができていますが、税制もそれに対応するため、日々複雑さを増しています。

ご自身では判断が難しい税金のご相談、お悩み事があるときは、是非CROSSROADグループにご連絡ください。

その他関連コラム