令和9年1月スタート!「防衛特別所得税」の創設と源泉徴収の実務
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「会社は無借金で、利益もしっかり確保できている。内部留保も十分に積み上がり、経営基盤も安定してきた。そろそろ次の世代へ会社を引き継ぐ準備を始めようか。」
このように考え始める経営者の方は少なくありません。
長年にわたり堅実な経営を続け、会社を成長させてこられた結果であり、経営者として大きな成果といえるでしょう。
しかし、私たちが事業承継のご相談をお受けする中で、まさにこの「会社が最も良い状態」のタイミングだからこそ、思わぬ課題に直面するケースが数多くあります。それが、業績が良いほど自社株の評価額が高くなり、後継者への株式承継が難しくなるという問題です。
非上場企業の自社株は、会社の利益や純資産などを基に評価されます。そのため、利益を積み上げ、財務内容が優良であるほど株価は高くなり、相続や贈与による事業承継では、多額の相続税・贈与税が発生する可能性があります。つまり、会社を健全に育ててきたことが、事業承継においては大きなハードルとなってしまう。これが、いわゆる“事業承継のパラドックス“です。
今回は、この問題が起こる理由と、会社の財務体質や手元資金を守りながら事業承継を進めるための考え方について解説いたします。
1.なぜ優良企業ほど事業承継の負担が大きくなるのか
非上場企業の場合、株式の市場価格が存在しないため、自社株の評価額は国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて算定されます。
代表的な評価方法としては、会社の配当・利益・純資産などを類似する上場会社の株価と比較して評価する「類似業種比準方式」や、会社の資産・負債を相続税評価額ベースで見直して評価する「純資産価額方式」などがあります。実際には、会社規模や株主の立場などによって評価方法は異なりますが、長年にわたり利益を積み上げ、内部留保や不動産などの資産を保有している優良企業ほど、自社株評価が高くなりやすい傾向があります。毎年安定して利益を計上していれば利益水準が評価され、同時に内部留保や不動産などの資産を積み上げていれば純資産も高くなります。その結果、どちらの評価方法でも株価が高くなる可能性があります。
創業当初は1株1万円だった株式が、事業の成長とともに1株30万円以上へ評価されることも珍しくありません。
例えば、自社株の評価額が総額5億円となった場合、その株式を後継者へ贈与すれば、多額の贈与税が発生する可能性があります。税額は株価や贈与方法、各種特例の適用によって異なりますが、納税資金の準備が大きな課題となるケースは少なくありません。さらに、その納税資金を会社から役員報酬や配当で捻出しようとすると、今度は所得税や住民税などの負担も生じます。
結果として、「会社を引き継ぎたいが、納税資金を準備できず承継が進まない」という状況に陥ることがあるのです。
2.株価だけを下げる対策では根本的な解決にならない
「大きな赤字を計上して株価を下げましょう」
「多額の退職金を支給して純資産を減らしましょう」
「節税商品を購入して利益を圧縮しましょう」
といった提案を受けることがあります。
もちろん、状況によって有効な対策もあります。しかし、退職金の支給には金額の適正性や実質的な退職の有無が問われます。また、経済合理性を欠く節税目的の支出は、資金流出や税務上のリスクを伴う可能性があります。そのため、株価だけを下げることを目的とした施策には慎重な判断が必要です。理由は大きく三つあります。
第一に、手元資金が減少することです。
過度な節税投資や一時的な資金流出は、会社の資金繰りや将来の成長投資に影響を与える可能性があります。
第二に、金融機関からの評価への影響です。
決算内容を一時的に悪化させる施策は、金融機関の信用評価に影響し、後継者の代になってから資金調達が難しくなる可能性もあります。
第三に、効果が一時的であることです。
本業が好調で利益を積み上げ続ければ、自社株の評価額は再び上昇します。
つまり、株価だけを見るのではなく、企業価値全体を見据えた事業承継戦略が重要なのです。
3.親族承継とM&Aでは、経営戦略が大きく変わる
近年では、親族や社内承継だけでなく、第三者へのM&Aも有力な選択肢となっています。後継者が株式を取得する資金を準備することが難しい場合や、後継者不在の場合には、企業価値を適正に評価してくれる第三者へ会社を譲渡することが、経営者・従業員双方にとって良い選択となるケースもあります。重要なのは、「誰に会社を引き継ぐのか」によって戦略が大きく変わることです。親族・社内承継では、自社株評価や納税資金を見据えながら、事業承継税制の適用可否も含め、計画的に株式を移転していくことが重要です。
一方、M&Aでは、買い手から適正な評価を得られるよう、収益力・組織体制・管理体制を整え、企業価値を高めていく経営が求められます。つまり、親族承継を目指すのか、社内承継を目指すのか、あるいは第三者承継を選択肢に入れるのかによって、取るべき対策は大きく変わります。
4.未来会計で実現する「会社を強くする事業承継」
私たち税理士法人CROSSROADでは、こうした優良企業ならではの事業承継の課題に対し、経営戦略支援サービス『CROSSNAVI』を通じた「未来会計」という考え方をご提供しています。
「売上は伸びているのに手元資金が思うように残らない」
「設備投資や採用の判断に迷ってしまう」
「承継に向けて何から手を付ければよいのか分からない」
こうした経営者の悩みを整理し、会社の未来を数字で見える化することで、「会社を誰に、いつ、どのような形で引き継ぐのか」という経営判断を支援します。
事業承継を単なる税金対策として捉えるのではなく、「会社を次の世代へどう成長させていくか」という視点から、中長期的な経営計画を一緒に設計します。
① 未来起点で事業承継を設計する
事業承継対策は、「今期の税金をいかに減らすか」という短期的な視点だけで考えるものではありません。
数年後、あるいは10年後の承継のゴールから逆算し、経営者の皆さまの想いや会社の将来像を丁寧に整理したうえで、中長期的な事業計画を設計します。
会社の成長を止めることなく、自社株評価や資金計画も見据えた「未来起点」の経営を支援すること。
それが未来会計の基盤となります。
② 株価対策を「企業価値を高める投資」へ
株価対策は、単に利益や純資産を減らすことが目的ではありません。
重要なのは、企業価値を高める投資を進めた結果として、自社株評価や税負担の適正化にもつなげていくことです。
例えば、
・承継時期を見据えた利益・資金・株価のシミュレーション
・DXや設備投資による生産性向上
・人材採用・育成による組織力の強化
・資金繰りを踏まえた退職金や設備投資の実行計画
・月次決算を活用した継続的な経営改善
これらを一体的に進めることで、会社の体力を維持しながら、将来の事業承継へ備えていきます。
会社の成長と事業承継を両立する仕組みづくりをご支援しています。
③ 経営会議を「報告の場」から「意思決定の場」へ
毎月の経営会議では、過去の数字を報告するだけではなく、「これからどう経営判断するか」を議論し、経営計画を着実に実行へ結び付けていきます。
過去の数字を確認するだけではなく、「この先どう動くべきか」を経営者とともに考え、その場で意思決定を行う。
そして翌月には結果を検証し、必要に応じて計画を修正する。
このサイクルを繰り返すことで、事業承継に向けた計画は机上の計画ではなく、「実行される経営計画」へと変わっていきます。
最後に、
「事業承継は、未来を描くことから始まる」
事業承継は、決して短期間で完了するものではありません。
会社の理念、従業員、お客様との信頼関係、そして未来への成長を次の世代へ託す経営そのものです。
特に優良企業ほど、自社株評価や納税資金、後継者への経営移行、あるいはM&Aという選択肢も含め、多くの課題を時間をかけて整理していく必要があります。
だからこそ、税金だけを見て判断するのではなく、「会社を10年後、20年後も成長させるには何が必要か」という視点で考えることが重要です。
自社の定例会議を、ただ過去の数字を確認する「報告の場」から、会社の未来を決める「意思決定の場」へ。
その積み重ねが、円滑な事業承継と、次の世代へ続く強い会社づくりにつながると、私たちは信じています。
自社株評価の現状把握や、未来会計による承継ロードマップの策定については、経営者の最も身近なプロフェッショナルである、私たち税理士法人CROSSROADへお気軽にご相談ください。