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要注意!関連者間取引の書類保存と青色取消しのリスク

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グループ会社間の経営指導料やロイヤリティについて、請求書に金額しか記載していないケースはないでしょうか。令和8年度税制改正で創設された「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」により、対価の明細や計算方法が分かる書類の保存が求められます。特に、グループ会社間で経営指導料、システム利用料、ロイヤリティ、業務委託料などを授受している企業は、既存の契約書や請求書で「計算方法」が説明できるか、一度確認しておくことが必要となります。

1.どんな制度なのか

この特例は、関連者間取引の内容や対価の計算方法を、書類によって確認できるようにする制度です。グループ会社間での支払額が恣意的に調整され、税務調査時に取引内容や計算方法を確認できない事例が散見された状況を背景として創設されました。なお、国税庁も過度に詳細な書類を一律に求める趣旨ではないとしています。

 

・対象となる「関連者」の範囲

関連者とは、内国法人との間に次のいずれかの関係がある法人です(法人税法施行規則第59条の2第3項~第6項)。

 ・親子会社関係:発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する関係

 ・兄弟会社関係:同一の者にそれぞれ発行済株式等の50%以上を保有される関係

 ・実質的支配関係:持株関係だけでなく、人事・事業・資金面から実質的に支配されている関係

 ※上記の関係が連鎖する場合も含まれます。

実質的支配関係には、自社の役員の半数以上を相手の法人の役員が兼務している場合、事業活動の相当部分を相手の法人に依存している場合、事業に必要な資金の相当部分を相手の法人から借り入れている場合などが該当します。

また、関連者は国内法人・外国法人の別を問いません。

該当するかどうかは、取引が行われた時の現況で判定します(同規則第59条の2第8項)。

 

・対象となる取引の範囲

対象となる取引は、関連者が内国法人に対して行う次の取引のうち、販売費、一般管理費その他の費用の額の基因となるものです。

 ・工業所有権等の譲渡・貸付け(例:ロイヤリティ)

 ・経営の管理・指導(例:経営指導料)

 ・情報提供、研究開発、広告宣伝などの役務提供(例:システム利用料、業務委託料)

一方で、売上原価や完成工事原価など原価の額の基因となる取引は対象外です。株主総会の開催など、株主としての地位に基づいて行われ、役務提供の対価の授受を予定していない活動も役務提供には該当しません。

なお、複数の役務提供を一括して請求されている場合も、そのことだけで対象から外れるわけではありません。

 

・関連者でない会社を経由する取引

関連者でない会社を経由する取引も、対象になる場合があります。例えば、親会社が外部会社を通じて自社に対象となる資産や役務を提供する場面です。次のいずれも満たす場合には、親会社と自社との関連者間取引とみなされます(同規則第59条の2第7項)。

 ・外部会社から自社への提供が、契約等によりあらかじめ決められている

 ・対価の額が、親会社と自社との間で実質的に決められている

 

・記載がなければ「特定事項記載書類」の保存が必要

契約書・注文書・請求書・領収書などに対価の額の明細や計算方法が記載されていれば、新たな対応は不要です。記載がない事項がある場合に限り、それを明らかにする「特定事項記載書類」の取得又は作成・保存が必要となります。

 

※出典:国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」

 

2.対象となる法人と適用時期

・対象は内国法人(規模を問わず、白色申告法人も対象)

保存義務を負うのは、関連者間取引を行った内国法人です。法人の規模は問われず、青色申告法人だけでなく白色申告法人も対象です(法人税法施行規則第59条の2・第67条の2)。一方、外国法人は対象外です(同規則第62条)。国外取引を想定した制度と思われがちですが、国内のグループ会社間の取引も対象です。ホールディングス体制の会社などは、特に影響が大きくなります。

 

・適用は令和8年4月1日以後に開始する事業年度から

令和8年4月1日以後に開始する事業年度に行う関連者間取引から適用されます。「自社は中小企業だから関係ない」ということはなく、3月決算法人であれば、今期の取引がすでに対象となっています。

 

3.作成期限・保存期間と記載の程度

実務で迷うのは、いつまでに、どの程度のことを書いておけばよいのかです。

 

・確定申告書の提出期限までに作成し、7年間保存

特定事項記載書類の作成期限と保存方法は次のとおりです。

 ・取得・作成の期限:取引を行った事業年度の確定申告書の提出期限まで

 ・保存期間:確定申告書の提出期限等から7年間

 ・保存場所:自社の納税地等

税務調査時に取得又は作成して提示すれば足りるものではないため、取引を行った都度、書類を整理しておきましょう。

 

・取引の区分ごとに定められた必要記載事項

必要記載事項は、取引の区分に応じて次のとおりです(法人税法施行規則第59条の2第1項)。

 ・工業所有権等の譲渡・貸付け:工業所有権等の明細、内国法人において果たす機能、対価の額の明細と設定方法

 ・費用分担等に係る事業活動(研究開発、広告宣伝など):契約又は協定に基づく事業活動の内容、内国法人が負担する費用の額の計算方法

 ・経営の管理又は指導等に係る役務提供(経営指導料など):役務提供の明細と内容、対価の額の明細と計算方法

例えば経営指導料であれば、「本社経理部による月次決算レビューを毎月実施(年12回)」といった役務提供の日時・回数と具体的な内容、「1回あたりの作業時間×単価」といった対価の内訳と計算方法を記載します。

 

・求められているのは「計算方法」

求められているのは算定根拠そのものではなく、「計算方法」です。第三者が価格設定の考え方や取引内容を客観的に把握できる程度の記載があれば足ります。

例えば技術指導料なら、計算メモに「売上高の○%」とあれば足り、その金額の妥当性そのものは記載事項として求められていません。

複数の書類を総合して確認できる場合や、移転価格税制のローカルファイルを保存している場合も、新たな取得・作成は不要です。一方で、対価が「一式」など抽象的な表示のみの場合は、特定事項記載書類が必要になります。

 

・毎年作り直しが必要か

役務提供等が2以上の事業年度にわたる場合、原則として各年度で書類の保存等が必要です。ただし、役務の内容に変更がないことを契約書等で確認できるときは、前年度の書類を引き続き保存する対応が認められます。毎年同じ書類を作り直す必要はありません。

 

4.未保存は青色申告の取消事由に

見落とせないのが、保存を怠った場合のペナルティです。

 

・法令上は青色申告の承認の取消事由に該当

特定事項記載書類が法令どおりに保存されていない場合、法令上は青色申告の承認の取消事由に該当します(法人税法第127条第1項)。承認が取り消されると、その事業年度は青色申告ではなくなります。その結果として、各種青色申告の特典を受けられなくなります。

 

・取消しを避けるために必要な対応

未保存のみをもって直ちに承認が取り消されるわけではありません。税務調査では、合理的な期間を定めて書類の取得又は作成・提示を求めたうえで、違反の程度や是正の状況などを踏まえて判断されます。それでも、提示を求められたときに備えて、書類の保存場所と社内の担当者を決めておきましょう。

 

・親会社が一元的に保存している場合

対価の額の明細等が記載された書類を、親会社等が一元的に保存しているグループも少なくありません。保存義務は取引を行った各法人に課されます。各法人が必要な書類を遅滞なく入手し、税務調査時に提示できる運用を整えておきましょう。

 

5.実務対応の進め方

対応の流れは次の図のとおりです。取引の洗い出し、既存書類の点検、不足する書類の作成・保存という順番で進めると、抜け漏れを防げます。

 

 

6.最後に

制度対応の中心は、新しい書類を増やすことではなく、既存の契約書や請求書で取引内容と計算方法を説明できる状態にすることです。

グループ会社間の取引の洗い出しや契約書・請求書の点検、特定事項記載書類の整備など、ご不明な点がございましたら、ぜひCROSSROADグループまでご相談ください。

 

(参照:法人税法第127条第1項、法人税法施行規則第59条の2・第62条・第67条の2、法人税基本通達17-3-5・17-3-7・17-3-8・17-3-10、国税庁「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて」(事務運営指針、令和8年6月30日))

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