「誰も住まない実家」、決断を先延ばしにしていませんか?──空き家、4つの出口戦略
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「取引先に請求書を送っているのに、いつまでも入金がない」――そんな売掛金を抱えたとき、「もう回収できないのだから損金にしたい」と考えるのは自然です。しかし税務上は、「回収できそうにない」という理由だけで、すぐに貸倒損失として認められるわけではありません。今回は、税法上の根拠と最高裁判例を踏まえ、売掛金がいつ損金にできるのかを解説します。
貸倒損失は、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」として損金算入されます(法人税法第22条第3項第三号)。ただし「いつ損失が発生したか」の詳細は条文になく、実務は法人税基本通達と判例によって形作られています。
① 法律上の貸倒れ(基通9-6-1)は、更生計画認可・再生計画認可の決定、特別清算の協定認可、合理的な基準による債権者集会の協議決定などにより債権が切り捨てられる場合です。一定の書面による債務免除もこの類型に含まれます(後述)。損金経理は不要で、事実が発生した日の属する事業年度の損金になります。
② 事実上の貸倒れ(基通9-6-2)は、法的整理がなくても、債務者の資産状況・支払能力等から全額が回収できないことが明らかになった場合です。担保物があるときは、その処分後でなければ貸倒れにできません。
③ 形式上の貸倒れ(基通9-6-3)は、継続的な取引を行っていた債務者につき、その資産の状況、支払能力等が悪化したことにより、当該債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合に、売掛債権から備忘価額(通常1円)を控除した残額の損金経理を認めるものです。継続的な取引先が対象のため、不動産取引のようにたまたま取引を行っただけの債務者には適用がありません。担保物がある場合は除かれ、貸付金は対象外です。なお、同一地域の債務者への売掛債権の総額が取立費用に満たず、督促しても弁済がない場合も同様に処理できます。
実務の判断基準を示したのが、平成16年12月24日の最高裁判所の判決です。経営破綻した住宅金融専門会社(住専)に対し、母体銀行が貸付金の返済を断念する「債権放棄」を行い、それを損金にできるかが争われた事件(税務実務では「興銀事件」と呼ばれます)で、最高裁は次の基準を示しました。貸倒損失を損金に算入するには「全額が回収不能であること」が「客観的に明らか」でなければならず、その判断は、債務者の資産状況・支払能力だけでなく、取立費用との比較や他の債権者とのあつれきなど債権者側の事情や経済的環境も踏まえて総合的に判断するとしたものです。つまり、「少しでも回収できる見込みがあるなら全額の貸倒れは認められない」という厳格さを保ちつつ、債権者の実情も考慮される、という内容です。
続いて、損金に算入できるタイミングを整理します。3つの類型で、算入できる年度はそれぞれ異なります。①は「事実の発生した日の属する事業年度」、②は「明らかになった事業年度」、③は「1年経過後に損金経理した事業年度」です。①は損金経理が不要のため経理忘れは計上漏れとなり、③は1年経過しただけでは自動的に損金にならない点にご注意ください。下図に整理しました。
債権放棄は、債務者に対する経済的利益の無償の供与にあたるため、経済合理性が認められない限り、原則として寄附金に該当します(法人税法第37条第7項)。寄附金は損金算入限度額を超える部分が損金不算入です(同条第1項)。ただし、回収不能に基づく債権放棄は経済的利益の供与があったとはいえず、貸倒損失に該当します(国税不服審判所・平成18年11月27日裁決)。要件は、債務超過状態が相当期間継続し弁済を受けられないこと、そして債務免除を書面で明らかにしたことです(基通9-6-1(4))。関係会社や役員への債権放棄は、特に慎重な検討が必要です。
取引先の債務を保証している場合、現実に保証債務を履行した後でなければ貸倒損失の対象にできません(基通9-6-2(注))。
売掛金が貸倒れとなった場合、課税売上に係る消費税額を控除できる制度があります(消費税法第39条第1項)。この消費税の貸倒れ控除については、法人税における①〜③に相当する事実すべてが対象となります(消費税法施行令第59条、消費税法施行規則第18条)。ただし、消費税では、その事実が生じ領収できないこととなった日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除します。③に相当する事実により適用する場合は、備忘価額控除後の残額が控除対象となります。また、控除には貸倒れの事実を証する書類の保存が必要です(消費税法第39条第2項)。なお、債権放棄が寄附金に該当する場合には、対価性がないため消費税の課税関係は生じず、控除を受けることもできません。
実務上は、請求書・契約書・入金履歴、督促状や督促記録、相手先の破産・廃業等に関する通知、債権放棄通知書、社内稟議書・取締役会議事録など、回収不能の根拠資料の保存が不可欠です。
売掛金の貸倒損失について、損金算入のタイミングは類型ごとに異なり、消費税では対象範囲は法人税とおおむね一致しますが、控除する課税期間や書類の保存要件など、消費税特有の留意点があります。貸倒損失は「回収できない」ことではなく、「税務上の要件を満たした」時点で損金となります。決算直前に慌てるのではなく、日頃から債権の状況を整理し、早めに税務上の取扱いを検討することが大切です。
貸倒損失の計上や債権放棄の判断でお悩みの際は、ぜひ税理士法人CROSSROADへお気軽にご相談ください。
・法人税基本通達9-6-1、9-6-2、9-6-3
・消費税法第39条第1項・第2項、消費税法施行令第59条
・消費税法施行規則第18条
・最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決(民集58巻9号2637頁)
・国税不服審判所・平成18年11月27日裁決(裁決事例集No.72)